24/25シーズンの開幕にあたって、トレーニング処方で自分が動かせるパフォーマンス目標を一つ立てました。どのチームよりも試合終盤20分に点を取り、同じ時間帯の失点はどのチームよりも少なく抑える。試合中のGPSは、私が見てきた限り試合パフォーマンスとの関係が弱く、時にはマイナスにさえなります(これについては稿を改めます)。それよりも、得点と失点という試合そのものの出力のほうが、フィットネスとコンディショニングで追いかける価値のあるKPIだと考えました。
プログラムがどこに着地したかを確かめるため、2025年のディビジョン2シーズンの得点データを引っ張り出しました。ジャパンラグビーリーグワンの8クラブ、14節、56試合。クラブ別・20分の時間帯別に、平均純得点を出しています。
近鉄のラスト20分は1試合あたりプラス8.07点。得点11.5に対して失点3.4です。この指標で次に来るNECグリーンロケッツ東葛はプラス5.14。8クラブのうち5クラブが、ラスト20分は純得点マイナスです。豊田自動織機シャトルズ愛知は20〜40分の時間帯でプラス7.6と、近鉄のラスト20分に並ぶ数字を出していますが、その織機が最後の20分ではプラス1.1まで落ちます。この2チームが、我々にとって最も手強い相手でした。
これは何で、何ではないか
純得点は、それ単体ではフィットネスの指標になりません。終盤に相手を上回るのは、単に力が上だったから、相手が諦めたから、ベンチのメンバーが強力だったから、あるいはスコアがすでに傾いていたから。1試合だけを取れば、どの説明も成り立ちます。それでも、ラスト20分で安定して強い、つまり試合をきっちり締め続けるチームというのは、フィットで、頑丈で、しっかり鍛え込まれたスコッドの証だと考えていました。
1クラブあたり14試合、対戦相手は8チーム。これだけ重ねれば、そのばらつきは平均でならされます。残るのは、多くのチームが失速するラスト20分で、どのチームが生産性を保っているかというパターンです。
この記事は、その話の得点だけに絞った版です。トレーニング側は姉妹記事のほうで扱います。ピリオダイゼーション、週ごとのボリューム、そしてラスト20分のプラス11.5の裏にある仕事の中身です。
シーズンの形
同じデータから2本の曲線を引いています。近鉄の時間帯別純得点と、残り7クラブのリーグ平均です。近鉄の曲線は、最初の20分のプラス3.0からラスト20分のプラス8.1まで上がっていきます。リーグ平均は最初の3つの時間帯を横ばいで進んだあとに下がり、マイナス圏で試合を終えます。
ラスト20分、順位順
近鉄がプラス8.1。2位のチームより50%以上大きい数字です。8クラブのうち5クラブが、この時間帯は純得点マイナス。これがリーグのパターンです。ほとんどのチームはラスト20分に取る点より取られる点のほうが多く、その失速はシーズンを通して、平均値に出てくる程度には一貫しています。
60〜80分は、近鉄にとって最も得点した時間帯であり、最も失点しなかった時間帯でもあります。リーグのパターンのちょうど逆です。
なぜこれがコンディショニングのシグナルに見えるのか
コンディショニングという読みを支える観察が3つあります。
近鉄のラスト20分の数字と、自チームの最初の20分の数字との差は、リーグでこの向きにプラスになっている唯一の差です。ほとんどのチームは4つの時間帯を通しておおむね均等に取り、取られ、最後に少し失速します。近鉄の曲線は上がります。我々のほうがフィットで強く、相手より長く持ちこたえて上回っている、ということなのか。1シーズンの記述的なデータから証明するのは難しいですが、パターンはその読みと矛盾しません。
ラスト20分の失点は3.4まで下がります。攻撃側の数字が上がるのと一緒に、守備側の数字が下がっています。攻撃だけ失速して守備は持ちこたえるチームは、仕事の半分をやっています。近鉄は両方です。
このパターンは14節を通して一貫しています。1試合や2試合の外れ値が引っ張っているわけではありません。ラスト20分の純得点は14試合中11試合でプラス、近鉄以外の上位3チームとの試合も含めての数字です。
ラスト20分は順位表に効くのか
ディビジョン2の各チームのラスト20分の純得点を、シーズン通算の得失点差に対してプロットすると、ピアソンの相関係数はプラス0.88。決定係数は0.78です。8チーム・1シーズンの範囲では、ラスト20分の数字が、各クラブの得失点差での着地の大部分をなぞっています。
この図には、正直に断っておくことが一つあります。ラスト20分の純得点は、それ自体がシーズン得失点差を構成する4つの時間帯別純得点の一つです。つまり0.88のうちいくらかは、自分が含まれている合計との相関です。もっときれいな検定は、ラスト20分を残り3つの時間帯だけに対して見ることで、これは「終盤をうまく締めることが、そのチームのシーズンの残りについて何かを語るか」を問う形になります。この関係は保たれますが、0.74ほどまで弱まります。本物のシグナルではあるけれど、話の5分の4ではありません。
直線はきれいには乗りません。そして、その線を外したチームが、リーグを制したチームでした。豊田自動織機は得失点差プラス216で1位。ラスト20分の純得点はプラス1.14しかありません。私が最も自信を持っていた指標が、最終的な王者をその下のほうに置いたわけです。彼らは終盤ではなく、試合の早い時間帯で勝ち切っていました。向こうはシーズンの入りも良く、我々は悪いスタートでした。ラスト20分の数字は強いシグナルですが、唯一のシグナルではありません。
逆方向も成り立ちます。得失点差で下位5チームに入ったチームで、ラスト20分の純得点がプラスだったところは一つもありません。通算で沈むチームはラスト20分でも点を垂れ流している、というのがリーグのパターンです。このシーズンでは、ラスト20分の純得点がプラスでないまま得失点差の上位3位に入ったチームはなく、下位5チームにプラスのチームもいませんでした。8チームではこれを法則と呼ぶには少なすぎますが、このシーズンに反例はありませんでした。
主張していないこと
因果だとは主張していません。この記事は記述です。ラスト20分を取るチームは、試合をより多く勝ち、シーズンの勝点も積み上げます。フィットだからか。強いからか。それとも単に戦術的に上手くて、相手をすり減らしているだけなのか。
リードしていること自体が、スコア状況に応じた戦術的な選択を生み、それがラスト20分の数字に返ってきます。このループの一部はコンディショニングで、一部はリードしている側の戦術的な構えです。これをほどくのは別の記事の仕事です。
2026年もリーグ全体の文脈がそのまま続くとも主張していません。2025年のディビジョン2は8クラブ・14節で、単一チームの分析よりはましとはいえ、一つの時間帯を見るにはまだサンプルは小さいままです。次点のラスト20分の数字、NECグリーンロケッツ東葛のプラス5.1は近鉄に十分近く、どちらかが2026年に一段上げれば、その差はすぐに詰まる可能性があります。
主張しているのは、記述的な見出しのほうです。2025年のディビジョン2シーズンで、近鉄はリーグ最大の差でラスト20分を勝ち取りました。それがこのデータセットです。
この数字の置きどころ
この数字の使い道は2つ。どちらもリクルートではなく、優先順位の話です。
一つはプレシーズンの計画です。ラスト20分の純得点は、多くのフィットネス適応を一つのアウトカムに集約した単一の数字です。コンディショニング・ブロックの目標が終盤の体力を保つことなら、プレシーズンの練習試合でのラスト20分の数字がそのテストになります。数字が動けばプログラムは効いています。横ばいなら効いていません。
もう一つは試合中の判断です。リーグの失速は、計画に織り込めるくらい実在します。8クラブのうち5クラブが、ラスト20分に取る点より取られる点のほうが多くなっています。その時間帯にスコアを維持、あるいは伸ばせるチームには、リザーブ投入のタイミングと50〜60分の移行局面での戦術的な構えを、他とは違う考え方で組む理由があります。
次の記事について
ラスト20分の数字はアウトカムです。トレーニング側はその原因の候補で、詳しく見せたいのはそちらのほうです。
姉妹記事では、年間のピリオダイゼーション曲線、フェーズ別の週間ボリューム、ポジショングループ別の内訳、そして全体練習すべての裏にあるマッチペースのタギングを扱います。シーズンを通した週ごとのスコッド平均トレーニング走行距離、プレシーズンのボリュームをインシーズンにどれだけ残したか、そしてインシーズンのきつい木曜日が実際どんなドリルで組まれていたか。
このリーグのほとんどのチームは、ラスト20分に失速しました。近鉄はしませんでした。